コラージュ、現像液の変容、カメラ本体へのビー玉の挿入など、様々な斬新な技術を駆使して、オノデラユキは、単なる写真の枠を超え、彼女の作品の本質を構成する新たな知覚へ到達する。オノデラの作品は、鑑賞者に新たな現実の姿を見せ、それを注意深く観察するように差しむける。偶然性は、オノデラの創作になくてはならないものだが、彼女の作業のあとをそのままあらわすために、オノデラによって念入りにコントロールされている。
2006年に行われた上海美術館での展覧会の図録の冒頭で、キュレーター、アラン・サヤグはオノデラユキについてこう述べている。「オノデラユキという作家は、見えるものを捉えているのではない。イメージを作る、というよりも、光を使って新しいイメージを創作する。(…)彼女は、現実の新しい次元に私たちを連れて行くために、もしくは、見えないものを見せるために、日常で見えている外観をひっぺがす事に専心している。
オノデラユキは複数の写真からなるシリーズごとに、念入りに、厳しく主題、額装、設営方法を選定する。作家自身がネガの現像に携わることによって、自身の作品の最初から最後までコントロールすることに成功している。オノデラユキは、自宅の窓辺から写真を撮るように(Birds, 1994) 、事実と伝説から構成された物語を作り上げるために、世界の反対側まで写真を撮りに行く(Below Orpheus, I.The missing person, II. Strange Distance, 2006)。今日オノデラユキは、世界的な名声を得て、ポンピドゥセンター、サンフランシスコ近代美術館 J・ポール・ゲティ美術館、上海美術館、東京都写真美術館など、世界中の美術館で紹介されている。また、数々の個展がヨーロッパ写真美術館2015、ニエプス美術館、東京都現代美術館、上海美術館、国立国際美術館などで開催されている。