グループ展 | Le soleil se lève aussi |2021年3月12日ー5月30日

参加アーティスト

ティファニー・ブーエル, マキシム・シャネ, マノン・ダヴィエ, アントワン・デュルフレ, シャルロット・ゴティエール・ヴァン・トゥール, アレクサンドル・カトウ, 井上織衣

ヴェルニサージュ 3月12日14時〜18時

ご予約:https://doodle.com/poll/28g9aq9dir6x6nt6

・感染拡大防止のため同時の入場定員数は20名までとさせて頂きます。
・定員に達した場合、お一人につき滞在時間を30分までとさせて頂きます。

より多くのお客様に楽しんで頂けるよう、ご理解とご協力のほど、よろしくお願い致します。

明け方は、私たちの目には見えない現象が起きていて、有形の事象はその姿を示すようになり、新しい風景が浮かび上がってくる。夜が朝へと切り替えられていく狭間の瞬間であり、 たくさんの荘厳な神秘の兆しが日々世界へと示される時である。再生を予感させ、希望を抱かせる時間である。変わることのないインスピレーションの泉であり、 ずっと昔から人々にとっては1日の始まりを刻みつけてくれる存在である。生命の象徴であり、世界を照らす惑星である。夜の闇を払い、魂を自由にし、 日と夜の循環は何人も狂わすことが叶わないことを証明している。

エルネスト・ヘミングウェイの小説の題名を借りて企画された展覧会 « Le soleil se lève aussi » では7人のアーティストの作品を展示する。 作品を通して、ある状態から別の状態へと移り変わっていく様、目に見えないものが見えるようになっていく変化について探求する。アーティストたちによって明らかにされる世界を前に、我々は変化と再生という万人に通じるテーマに思考を巡らすことになる。

ティファニー・ブーエルの絵を見た人々は、過去の思い出と旅について思いを馳せるだろう。彼女はさまざまな幾何学模様と光の具合によって、私たちが気ままな散歩や日々の生活で見つける風景を作品に映し出す。色のプリズムと模様が与える印象によって、そのような風景を鑑賞者が作品の中に再発見するよう促しているのだ。

写真家マキシム・シャネは、明け方の青い光が日常に取り残されたような人々を照らす幻想的な場面に日本で遭遇した。作品にはその独特で寂寥たる場面が切り取られ、収められている。

マノン・ダヴィエはアートと職人芸の中間に位置するようなタペストリー作品を生み出している。彼女のグラフィック技法は、鮮やかな色調を用いていることと様々な形状を統合していることが特徴である。作品には神秘的な思想と神話の物語が込められている。

アントワン・デュルフレはシュルレアリスムの風景を描く。彼は人がまだ足を踏み入れていない未開拓の世界というものを私たちに示している。自然は拡がっていくものであり、人が制御できるようなものではない。それゆえに自然には定められた範囲というものがなく、人間がいなくなった遠い未来の世界の幻影を生み出すことができる。

シャルロット・ゴティエール・ヴァン・トゥールは私たちの目に見えない世界を明らかにする。彼女は生態系と生物の繋がりを読み解き、様々な物質が起こす魔法を解き明かす。彼女が想像するその形態は有機的であり、また多くの偶然やセレンディピティを含んだ行動が生み出すものである。

アレクサンドル・カトーは日常に存在するモノに対し別の在り方を与えることで、そのモノに新しい象徴的価値を付与している。彼は特に日本と結び付けられる、または日本を偶像化していると言える素材を使い、それらが元々持っていた象徴的な価値から切り離して新たな在り方に作り替える。彼が手掛けたモノたちはこれまでそのモノが有していると思われていたのと全く異なる新しいエピソードや歴史、考えが込められていると作品を見る私たちに思わせる。

そして井上織衣は生命と、この世の神秘、そして目に見えない事象と私たちとの関わりについて探求する。彼女は私たちが認識したこと、感じたこと、想像したことが投影されたかのような作品を生み出す。それらを通じて、彼女は自身が見つけたこの世の生き物たちと私たちとの結び付きとそれに対する驚嘆の思いを共有し、可能性の芽生えという希望を鑑賞者に抱いて欲しいと願っている。

 

ティファニー・ブーエル

1992年生まれ、パリで活動。

日本人とフランス人のハーフであるティファニー・ブーエルは、絵画と造形芸術を専門とするアーティストとして活動している。自身の初のシリーズ作品である « Mauvais Rêves »は、2018年1月にサン・ポールのギャラリーTokonomaにて発表された。

彼女の作品は変革を繰り返し続けている。自身が旅で得た経験によって、彼女が絵画に用いる幾何学模様のバリエーションはより豊かになっている。2019年には自身の初の個展 « HAJIMARI »をマレ地区で開催した。

彼女の作品の特徴は、ヴィヴィッドな色合いの様々な形状の模様を、層を重ねるように組み合わせることで作品の中にコントラストを生み出している点だ。この“重ね合わせ”のような、新しい技術を制作に用いることで、彼女の色使いの幅は広がり続けている。例えば、一見鮮やかでカラフルな作品が、他方で、暗い褐色や土色の模様も含んでいる。

キャンバスという単一の場に囚われず、彼女は タペストリーや家具、建物や洋服などあらゆるものに表現を試みる。コモ湖で見た鏡のような水面に映る景色からハイデラバードで見つけた古びた壁まで、彼女は様々なものに対し素朴さやメランコリー、アンバランスさを見出し、独自の美の定義を探求している。また作者は、私たち、特に女性が社会で生きる中で抱えうる負の精神状態について問いかけている。記憶障害や心理的ショック、 ソーシャルメディアが与える影響などについて作品制作を通じて探求する。

https://www.tiffanybouelle.com/

 

マキシム・シャネ

1988年生まれ、パリで活動。

彼の写真家としての活動は13歳の時から始まった。スケートボードと音楽に打ち込んだ青春時代の日々からインスピレーションを得て、自身の作品に « 退屈さの中で生まれる創造力 »というテーマを見出した。

自身に最初のカメラを与えてくれた祖母に背を押され、彼は写真家の道をより現実的に見据え、己の眼と技術を磨き上げていく。バカロレアを取得した後にパリで写真撮影を学び、異例の早さでニコラ・ゲランのカメラアシスタントとなった。これにより映画界や出版界に携わり撮影技術やライティング技術を磨く機会に恵まれた。

その後、アシスタント業務や依頼されたプロジェクトをこなす傍ら、自身の撮影プロジェクトを始動させた。彼は人の内面や秘められた人生というものに特に興味を持つ。彼は自身の撮影旅行を、心の赴くままに歩く中で偶然すれ違う人々の見えない一面を探る機会と捉えている。

彼の美学は自身が熱狂的な映画ファンであることに影響されている。写真を映像の中のワンシーンと考え、人々の日常生活の一部を切り取ったかのような作品を撮影する。彼の写真は、そこに映る人の過去はどうだったのか、あるいは未来はどうなるのか、作品を見る人々の想像力を刺激する。

マキシム・シャネは意図的に50mmカメラを撮影に使っている。これにより、彼は撮影対象を自身が見た姿そのままに作品に写すことが出来る。50mmレンズは、私たちが肉眼で物を見た時の見え方に最も近い感覚を再現するのに適しており、そのため作品にカメラマンと撮影対象者たちとの近しい距離感を表すことが出来る。

https://www.instagram.com/maxime_chanet/

 

マノン・ダヴィエ

1994年生まれ、パリで活動。

彼女は現代的なデザインのタペストリーを専門としている。作品は主に室内の空間演出や展覧会への出展を目的に制作されている。彼女の作品は、異なる種類の繊維素材を複数組み合わせて作られているという特徴がある。

その制作活動はアートと職人芸と両方の一面を持ち合わせていると言える。というのも、作品のイメージ、構想、表現を実現させるために技術が求められるからだ。作品は作者がこれまで見聞きした逸話や自身の思い出、展覧会や様々な書籍の内容からインスピレーションを得て制作される。作品を通じて作者は自然の美しさと神秘性を伝えようとしている。彼女の作品の特徴は揺らめくような色合いを生み出す色使いと、様々な形を統合して描かれる模様である。動植物の多様性の豊かさ、この世で不滅であるもの、静物画で表現されるような詩情、歴史に存在する謎、そして一生の儚さといったものが作品の主なテーマとして取り上げられている。

彼女は自身のタペストリー作品で、 人の手を使う昔ながらの手芸(二重縫い、編み物、刺繍かぎ針編みなど)に、より現代的で機械を使った織物技術を合わせている。作品の中で様々な描写が調和を取りつつ組み合わされている。レリーフや色の濃淡、色合いを巧みに操り、マノン・ダヴィエは異なる図面や質感を生み出している。

https://www.instagram.com/manondaviet/

 

アントワン・デュルフレ

1990年生まれ、パリで活動。

アントワン・デュルフレは視覚芸術を専門とする。グラフィックアートの分野で2つのディプロムを取得し、ストラスブールの美術学校HEARのイラスト学科のアトリエで技術を磨いた。作者の作品の主なテーマは女性の絵と写真のような風景画である。彼はこの2つのモチーフに人が旅を通じて得る考えや、風景の美しさから見出す神秘的な寂寥感を表わしている。

https://antoinedurufle.tumblr.com/

 

シャルロット・ゴティエール・ヴァン・トゥール

1989年生まれ、マルセイユで活動。

作品制作を通じて、作者は目に見えない世界の知られざる事実や生態系と生物の関係性を明らかにしようとしている。例えば、自然界における物質の構造の普遍的な法則に則り、作品の中でもミクロとマクロの形式を対応させている。アートはこの世の全ての事象に存在する相互関係を紐解き、自然の概念とは何かを問いかけ、我々人間が他の種と向き合う機会を作るための方法の一つであると彼女は捉えている。

そういうわけで、彼女の作品には自然科学の考えが常に取り入れられている。一見すると実験室のように見えるアトリエで作品制作は行われ、彼女がアーカイブに保存しているこれまでの実験記録や光学、気象科学、生物学に関する資料、そして彼女の想像力を掻き立てる映像や用語といったものからもそれが分かる。彼女はまた、宇宙誕生やその進化についての数々の神秘的な物語、いわゆる宇宙発生説と呼ばれるものにも興味を持っている。これらは科学的ではありつつ、私たちの周りにあるものの起源や役割を想像力によって理解しようとした結果生み出された。このような私たちの世界が内包している神秘の探求は、彼女の作品の主なテーマとなっている。彼女はそういったものにスポットを当てて別の解釈を試みたり、私たちが魔法のように感じる現象がどのように起きているのかを明らかにしようとしている。作品の形状は有機的であり、偶然や作者が意図せず行った動作によって生まれている。

https://charlottegautiervantour.fr/

 

アレクサンドル・カトー

1991年生まれ、マルセイユで活動。

アジアの、特に日本のアートと西洋のアートを突き合わせて、アレクサンドル・カトーは作品に用いたモノの起源を再定義し、「西洋のモノの見方」から脱却させようとしている。彼がフランス的な要素と日本的な要素両方を取り入れて作り出している庭は、異なるものが入り混じること、異国情緒と評されるもの、そして西洋以外の文化の要素としてしばしば結び付けられる自然の概念に関する彼自身の考えを表現するための軸になりつつある。

工業製品や日用品は、作者の彫刻作品や映像作品で重要な要素として用いられる。作品の材料として使うことで、アレクサンドル・カトーはこれらが考案され、製造され、世に出回った時には想定されなかった象徴的な価値を付与しようとしている。作品に用いるモノは熟考の末に選び出される。それらが元々もつ機能に込められた考えと、作者によって新たに生み出された在り方を並べてみることで、モノの変化によって生まれる、かすかにユーモアを感じさせるギャップを生じさせている。

http://www.alexandrekato.com/

 

井上 織衣

1983年生まれ、モルヴァンで活動。

小宇宙から大宇宙まで。自然現象から超自然の神秘まで。そして私たちの惑星を生き生きと彩る有形無形の多様な生命のあり方から宇宙を形作るパワーやエネルギーまで。井上織衣は生命と、この世の神秘と、そして目に見えない事象と私たちとの関わりについて探求する。

私たちの認識したこと、感じたこと、想像したことが投影されたかのような作品を通じて、作者は驚きとこの世の生き物たちと私たちとの結び付きを共感し、可能性の芽生えという希望を私たちに抱かせたいと願っている。