熊野真木子
東京生まれ。現在、フランスのブルターニュ地方に暮らし、制作を行っているまるアーティストは印画法の発展型とされるフレッソンプリントの技術をよく用いて制作している。父から息子へと秘密に受け継がれてきた技術の工程は、イマージュを炭を使って紙に描き出す技法で、質感や手触りを表現し、修正のきかない抽象的な撮影結果を実現する。
熊野真木子はフィルムとデジタルの分野で、自然の混じりけのない美しさに非常に敏感である。例えば、砂で覆われた表面や水たまりに映る都市建築。模湖(もこ)とした映像には、説明しようとする余計な企みさえも削ぎ落とす試みがあり、「言葉」にはならないが、確かに微睡(まどろ)みに似た「語り」がそこにはある。いつまでも「言葉」にしたくない、そんな「心象風景」がある。作品は、フランス国立図書館に所蔵されている。